広告制作会社が代理店を通すメリットとデメリットは?
コピーライターの大半は制作会社(プロダクション)か、あるいは広告代理店(広告会社)に所属する事になります。
今回は、制作会社側から見た広告代理店の存在意義について書いてみたいと思います。
制作会社から見て、広告代理店を通して仕事を受けるメリットとデメリットが知りたい!
そういった疑問にお答えします。
広告代理店を通すメリット
制作会社の受注スタイルとしては、「広告代理店の下請け」と「クライアントと直接取引」の2つが基本となります。
違いは文字通り、代理店を通すか通さないかです。
今回は代理店を通して仕事を受けるメリット・デメリットを見ていきます。
仕事を回してもらえる
制作会社が広告代理店を通す大きなメリットとして、まずは仕事を得やすい事が挙げられます。
代理店とつながりができていると新しい仕事を回してもらいやすくなります。
自分たちで顧客を獲得しなくても、代理店が仕事を取ってきてくれるんですね。
私が以前いた制作会社には、いわゆる営業がいませんでした。
直接取引はほとんどなく大半が代理店経由で受ける仕事ばかりだったんですよね。
そういう会社にとっては代理店の存在はとても大きいです。
代理店の営業に「ここのプロダクションは使える」と思ってもらえれば、継続的に案件を任せてもらえますからね。
仕事の話が来る時なんかも「○○の案件が入ったんだけど、やってみます?」みたいに実に軽いノリでしたね(笑)
ディレクション能力が無い小さな会社でも大丈夫
大きな代理店ならある程度自社で完結してしまうこともありますが、小~中規模の代理店であれば業務を分担して外注することがほとんどです。
広告の制作を担う主な職種を挙げてみると、
○マーケティング・・・マーケター
○コピーライティング・・・コピーライター
○デザイン・・・デザイナー
○写真・・・カメラマン
○CG・・・パース制作会社
○イラスト・・・イラストレーター
○動画コンテンツ・・・映像制作会社
もっと細かく分かれることもありますが、概ねこのような人たちの力を集めて広告は展開していきます。
案件によっては不要だったり、いずれかの複数を兼任する人(もしくは会社)がいる場合もあります。
大手の代理店であれば自社に所属している人たちで大体の業務は進められますが、小規模な代理店だとそもそも自社に人材がいないため外注することになるんですね。
どのような分担でどの制作会社に仕事をお願いするかは代理店の担当次第ですが、分業しているので小さな制作会社でも仕事がもらえる可能性はあります。
選ばれる理由は、何かのジャンルに特化していたり、ただ単価が安いなどいろいろあるとは思いますけどね。
あとは時間的な融通が利く会社も重宝される傾向にあります。
夜遅くに修正対応してくれたり、スケジュールがおしている時に土日出てくれたりする制作会社は代理店からしても使い勝手がいいんですね。
制作側からしても、この辺の対応はなかなか請求書には乗せにくい現状があります。
こういった状況が、「クリエイティブ業界はサービス残業が当たり前」になっている原因ともなっているのは間違いありませんね。
広告主と直接仕事をしなくてもよい
代理店を通さないので、当然クライアントと直接やり取りをすることはありません。
まあでも、実際の業務の中では結構あったりもするんですけどね。
代理店の営業が忙しくて「ごめん、今日の定例会議行けそうになくてさー、ごめんだけど一人で行って話聞いてきてくれる?」とか。
他にも営業が楽をしたいからなのか、修正の入ったpdfがクライアントから直接送られてきたりとか。
あとこれは番外編ですが、クライアントが「ちょっとあの代理店の営業何言ってんのか分からないんだよねー。ちょっとあなたと話したいんだけど今大丈夫?」なんて電話をかけてきたり。
こんな感じで直接やり取りする場面はあるんですが、最終的な責任って意味ではあくまで代理店とクライアントの契約案件なわけです。
何かあった時もクレームは代理店に入りますし、面倒なことも基本的には代理店が担うことになっています。
そういう意味では、代理店を通していると気が楽だと感じる場面も多いです。
広告代理店を通すデメリット
一方、デメリットもあります。
ひとつひとつ説明していきましょう。
単価が安くなる
当然、ギャランティーの面では不利になります。
簡単に言うと、中抜きされる分だけ自分たちがもらえる金額も少なくなるということです。
直接であれば10もらえていたものが、間を通すことで9になったり7になったりします。
費用がどういった形で請求されるのかはケースバイケースですが、例えばクライアントからあるツールの制作費は大体100万くらいと言われていたとすると、代理店はその10~20%とかに制作費をおさえて作らせることになります。
なぜならマージンを中抜きするので、制作会社に100万請求されるような仕事になると困るわけです。
代理店と制作会社の関係性が出来ていれば大体の制作費は分かるので、代理店の営業はクライアントの経費を頭に入れながら制作会社に仕事を振ることになります。
クライアントの意志が伝言ゲーム状態に
クライアントの考えが見えにくくなりがちなのもデメリットですね。
代理店の営業が「どうやら○○の方向性にしたいらしい」と言ってその通りに制作すると、微妙に要望とずれてたり。
この辺のことは、どうしても営業のヒアリングやディレクション能力に大きく左右されがちなんですよね。
クライアントが言ってる意図をきちんと汲み取った上で、制作側に対してもきちんと正確に伝えられる能力が営業には必要になります。
とはいえ、代理店の営業さんもそんな完璧な人ばかりではありません。
なので私は代理店にまかせっきりにするのではなく、クライアントの打ち合わせには極力参加させてもらっていましたよ。
一緒に話を聞き、クライアントがどういったことを望んでいるのかを探りつつ、気づいたことなんかをメモしてました。
で、打合せが終わってから代理店営業と「こういうこと言ってたよねー」なんてすり合わせをする。
そうやって確認し合うことで、なるべくミスマッチを防ぐように努めてました。
とんちんかんな提案や修正をして二度手間になり、後々苦労するのは結局制作会社の方ですからねー。
尚、代理店経由だと自分たちの考えを100%伝えられないことも逆に多いです。
極端な話、直接提案していたらOKのはずだったものが、代理店の意向で表現が変えられたり、場合によっては無かったものにされることもありますからね。
「ホラ見ろ、やっぱり俺が言ってた通りじゃないか!」
なんて思ったとしても、グッとこらえてガマンしなければいけないのが請負の立場の辛いところです。
いちいち代理店経由でチェックしてもらうのはめんどくさい
基本的に、制作物を作り上げていく中で何度かクライアントにチェックしてもらいます。
しかし代理店を通してい仕事だと、クライアントに見てもらう前に代理店にも目を通してもらわなければいけません。
まあズボラな営業とかだと「俺見なくても大丈夫でしょ!先方に送っといていいよー」なんてこともありますが、基本的には代理店がチェックをしてクライアントに送ることになります。
これがもうめんどくさいのなんの。
いや、その仕事ができてるのは代理店のおかげなのは分かってますよ。
でも、締め切り間近で夜中の作業とかになってくると、代理店の存在がめんどくさくなってくるんですよね(笑)
ちょっと目を通してもらえればチェックできるのに、営業が会議中か何かでなかなかCB(チェックバック)がもらえない。
まあ営業の人もその仕事だけやってるわけじゃないので思い通りにいかないのは仕方ないんですが、こっちはこっちでその修正さえ終わったら帰れるのに!なんてイライラすることもあります。
スケジュール管理がいいなりに
上で書いたことと関係してきますが、代理店経由だとタイトなスケジュールになることも多いです。
代理店は代理店で常に複数の案件を抱えていますし、言い方は悪いですが制作側の僕らは彼らからしてみれば「コマ」に過ぎないわけです。
「予定にはなかったんだけど、クライアントが急に○○やりたいって言いだしてさー。ちょっと何案かパパッと作ってくれない?」
・・・なんだパパッとって。
現役デザイナーの人なら、この気持ち分かるかと思います。
まあでも、タイトなスケジュールをこなすことで代理店から懇意にされやすくなることも確かです。
「あそこの制作会社はちょっと厳しいスケジュールでも対応してくれる」と思ってもらえれば、次からも仕事が回してもらいやすくなるのは当然あります。
ただし、絶対譲れないラインは会社としてハッキリさせておいた方がいいです。
じゃないとボロ雑巾のように使い回されたあげく、社員が疲弊しきってやめていく・・・なんて場面は私自身何度も見てきましたからね。
経営者からすると、他の会社に取られるくらいなら自分たちがムリしてでも仕事を受けていたいってことなんでしょうけど、そういった力技の部分で勝負するとどうしても「時間の安売り」につながっていきます。
・対応はできる限りするが、それ相応の費用は請求させてもらう
この2点を徹底できるとだいぶ違ってくるんですけどねー。
まあクリエイティブ業界の現実を見ると、理想論に過ぎないのかもしれませんが・・・。
結局、代理店を通した方がいいのか悪いのかどっち?
代理店と付き合うかどうかは、それぞれメリットデメリットがあるのでどちらがいいとは一概に言えません。
実際、まったく代理店を通さずに直取引だけで仕事をしている会社もあります。
逆に代理店仕事だけで回している会社もあります。
個人的には、代理店に全ての業務を依存するのはやめておくべきだと考えています。
何かトラブルがあった時など、そのルートから仕事が入ってこなくなるからです。
1社の代理店に依存している状態なんて最も危ないですね。
実際、私がいたプロダクションはほぼこの状態だったので、不景気になった時に一気に仕事が減ってしまいました。
特に営業担当もいなかったので、その後はみるみるウチに業績は悪化。
結局その会社は倒産してしまいました。
なので、理想は代理店からの仕事と直接取引の割合を均等に近いものにしておくことではないでしょうか。
付き合う代理店やクライアントも複数あった方が当然リスクヘッジになります。
まあでも小さな制作会社だと人数が少ないので、どうしても受注先は少なくなりがちですけどね。
この辺は経営者のバランス感覚が問われるところだと思います。
最後に
今回は、「制作会社は広告代理店と付き合うべきか?」について、メリットとデメリットを交えて解説してきました。
いまコピーライターやデザイナーを目指している人にとっては、正直ピンと来ないことが大半だったと思います。
ですが、一部をのぞいた多くの制作会社は広告代理店となんらかの付き合いがあります。
本記事をお読みいただくと、代理店と制作会社の付き合いについて少しは理解できるかと思いますので、実際に仕事をしていくうえで参考になればと思います。